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【調査】福島原発事故から5年 「消し去られた」真相

2016-05-25 人民網日本語版 人民网日文版



福島県飯館村の村役場前には、何やら物々しい放射線量測定器が設置されている。わずかな汚れも見当たらない表示板には、「毎時0.38マイクロシーベルト(μSv)」という数値が赤字で表示されている。ここから東京電力福島第一発電所までは、約40キロメートルの距離がある。

 

物理学が専門の田尾陽一氏は、表示板を見ながら、「この数値は異常に低い」と吐き捨てるように言った。そして、近くにある目立たたない測定器を指差し、「あれは我々が設置した測定器で、地面付近の放射線量は、この数値の8倍から10倍に上る」と続けた。

 

田尾氏は、このような現実と、「原発事故の影響は有限」「事後処理は順調に進んでいる」などの日本政府による宣伝文句との間には、あまりにも著しい差があると感じている。同様の疑念や憤慨の気持ちを抱いている人は、田尾氏以外にも数多くいる。特に福島では、深刻な損害を受けた人や、助けを求めようにもその方法がない人が後を絶たない。

 

今年は福島原発事故から丸5年、チェルノブイリ原発事故からちょうど30年の節目の年にあたる。チェルノブイリ原発事故については、国際的な各種調査や記念行事が絶え間なく行われている。だが、同じ国際原子力事象評価尺度(INES)の「レベル7(最も深刻な事故)」であっても、福島原発事故に対する調査は、常に薄いベールで覆われている感が否めない。

 

福島原発事故の処理状況が人々に与える印象は、「著しい差」という単純なものだけでは済ませられない。真相がないという「真相」の裏には、いったい何が隠されているのだろうか?

 

○「誤りを自覚しながら、指摘や批判を恐れて改めようとしない」日本政府の態度

 

なぜ、これほど「差」があるのだろう?2つの測定器が示す測定データの差について、田尾氏は、「これ(村役場前の計測器)は、政府が設置したもので、設置前に自衛隊が地面の除染作業を徹底的に行ったため、検出される放射線量は絶対に高くない。これが政府のやり方だ」とその理由を指摘した。

 

真相は「消し去られた」。その後に残ったものは、「忘却」ではなく、「憤り」だ。

 

2015年、朝日新聞と福島の地元メディアが発表した合同世論調査の結果によると、「政府による原発事故の処理方法に対して不満を感じる」と答えた福島県民は7割を上回った。特に目立ったのは、子供の甲状腺がんをはじめとする健康問題に対する懸念だった。日本政府は、この問題への取り組みについて曖昧な態度を取ったため、国内外の関心と疑惑はますます高まった。

 

2015年末、岡山大学津田敏秀教授の研究グループが、国際環境疫学会が発行する医学雑誌「Epidemiology(エピデミオロジー)」に研究論文を発表した。同論文では、福島県に住む子供の甲状腺がんの罹患率は、全国平均の20倍から50倍に上り、統計学上の誤差の範囲を大きく超えていると指摘され、今後の患者数がさらに増えることは避けられないとの見通しが示された。だが、同論文が発表されてから現在に至るまで、日本政府と福島県は、この論文の内容を重視するどころか、反発や批判の立場に立っている。

 

国際環境疫学会は今年1月、日本政府に書簡を送り、福島の子供たちの高い甲状腺がん罹患率に対して「憂慮」の意を示した。また、福島で調査活動を実施するための専門家チームを組織派遣することも提案した。だが、日本の環境省は、「同学会から送られた書簡は参考とするが、持続的な追跡調査などの対策措置については、福島県がすでに着手している」と回答した。

 

このように、国際的な調査活動を行うという提案要求について、日本政府からは前向きな回答は得られず、それの提案が実を結ぶことはなかった。

 

○沈黙による傷害

 

仏ルモンド紙は、福島原発事故5周年に際して論説を発表、原発事故に対する日本政府の「思惑」を総括、それを「国家の忘却願望」という言葉で結論づけた。

 

日本政府は20138月、放射能に汚染された地下水が毎日少なくとも300トン以上、福島第一原発から海に流出しており、しかも、このような状況は、原発事故発生以来ずっと続いているという事実を認めた。だが、同年9月、安倍晋三総理は、東京五輪招致のプレゼンテーションスピーチにおいて、汚染水問題に言及し、「状況はコントロールされている」「全く問題はない」と大嘘をついた。

 

東京の五輪招致が成功した後も、福島原発における放射能汚染水の漏水事故が発生したのは、2度や3度にとどまらなかった。福島県の某地方議会は抗議の書簡を送り、「政府は事実から目を背けている。重大な問題は残されたままだ」と、安倍総理の言い分を批判した。

 

事実を「遮る覆う」やり方は、事故発生当初から見られた。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長によると、事故発生当初、IAEAに入ってくる関連情報は非常に乏しかったという。このため、天野氏は自ら日本に赴き、当時の政府指導層に対して状況説明を求め、ようやく日本はさらなる情報を提供した。

 

さらに人を驚愕させたことは、東京電力関係者が、同社の炉心溶融(メルトダウン)に関する報告が遅れたことを実証したことだ。東電担当者は、事故発生前から同社にはメルトダウンの判定基準があったが、今年2月になって初めて、この判断基準の存在に気づいた始末で、事故発生後5年間ずっと、判断基準について知らなかったことを明らかにした。

 

○真相は直視されるべき

 

米ウッズホール海洋研究所シニアリサーチャーを務めるケンベッサラー博士は、「日本政府と国民との意思疎通が酷すぎる」と指摘、以下のとおり続けた。

 

「この分野の業務は、一日も早い改善を要する。国民が放射能汚染レベルと健康に対する影響についてより深く理解するよう、政府は説明を尽くさなければならない。これらの業務を行う責任があるのは、なにも政府と東京電力に限らない。環境放射化学分野が専門の研究者も参与すべきだ」

 

ベッサラー博士は、2011年以降の福島原発事故による海洋への影響を研究しており、ウッズホール海洋研究所内に海洋環境放射線センターを創設した。「福島原発事故が海洋に及ぼす影響について、参考となる前例は皆無だ。というのも、原発から漏れ出した放射線物質の80%が海に流出したからだ」と博士は説明した。

 

一方、これらの影響をめぐる日本側の態度についてみると、「原発事故による影響は有限」が基本スタンスとなっている。このほか、一種の「沈黙」「冷淡」といった態度が随所にみられる。だが、海外各国の専門家は、「日本政府は、意識的に、原発事故が環境健康食品の安全などさまざまな分野に及ぼす長期的な影響を曖昧にしようと意図している」と指摘した。

 

さらに、ある専門家は、「日本の当局は、原発事故の処理や善後策に対して、根拠のない楽観的な姿勢を貫いており、その結果、事故の影響を拭い去ることに立ち向かう力不足に陥っている」との見方を示した。チェルノブイリ子ども基金の顧問を務める小児科医の黒部信一氏は、チェルノブイリ原発事故被害者の療養施設を訪れた経験がある。同氏は、「チェルノブイリ原発事故と比べ、福島原発事故では、事故後に設立された専門療養機関の数が少なすぎる。日本政府の処理方針に依拠すると、30年後、福島原発事故によってもたらされる健康被害は、チェルノブイリ原発事故の危害よりさらに大きいと予想される」とコメントした。

 

関係者は、「日本政府が故意に原発事故の影響を『ぼやかそう』としていることは、国際的にみれば、道義と責任感に欠けた振る舞いだ」と指摘。国内からみると、さまざまな政治的圧力から逃れること、日本のイメージを損なうことを避けること、特に海外から2020年東京オリンピック開催の安全性が保証されるのかという疑惑を払拭すること、などの意図が見え隠れしている。

 

ベッサラー博士は、「今後、国際調査委員会あるいは海外の研究者が、福島原発事故による影響に関する長期的な研究を展開しなければならない。特に、独立した第三者機関による調査が必要だ」と強調した。

 

民間環境NGOFoE Japan」の満田夏花理事は、日本政府が福島の原発避難者の帰還政策を加速していることに大きな不安を感じている。同政策によると、遅くとも来年3月までに、政府は福島原発周辺の「居住制限区域」など放射能汚染エリアの居住禁止令を全面的に解除する予定で、55千人の避難者が対象となる。また、避難者の帰還を促進するため、当局は20183月までに、これらの避難者に対する補助金の支給を打ち切る方針という。

 

放射能漏れ事故の原因は、いまだに明らかにされておらず、事故の責任追及もあいまいなまま、放射能汚染リスクは決して下がっていない。このような状況にも関わらず、原発避難者を汚染されたままの故郷に返すことなど、どうしてできようか?「FoE Japan」の満田理事は、「政府が災害復興という旗印のもとで実際にやっていることといえば、放射能汚染の被害者を見捨てることに等しい。そうやって、健康に対するリスクの真相を消し去ろうとしている」と怒りを露わにして訴えた。

 

「このような復興政策は、『人を人とも思わない』復興だ」と満田氏は締めくくった。



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