文化財紹介番組「国家宝蔵」放送スタート 若者に伝統文化の魅力伝える
「田舎っぽいセンス」と突っ込まれる乾隆帝
第1回では、俳優の王凱(ワン・カイ)が出演した「乾隆小劇場」が大きな話題となった。これは、番組の一部で、有名人が歴史人物に扮し、文化財の背後にあるドラマを紹介する企画。
王凱が紹介したのは、「瓷母」と呼ばれる各種釉彩大瓶だ。清の第6代皇帝・乾隆帝の時代に製作された磁器で、うわぐすりが15層施されている。「瓷母」と呼ばれていることから、中国古代の磁器工芸が最高峰だったことが分かる。しかし、それがカラフルであるため、「乾隆帝の美的センスはちょっと田舎臭い」という声もある。
番組では、「瓷母」について、「全ての人に理解されることは望まない。後の世代の人々が、繁栄した王朝は、開放的で、包容的な心を持っていることを知ってくれればそれでいい」と話す王凱のセリフがあった。あるネットユーザーは、「以前はカラフルな『瓷母』があまり好きでなかったけど、今はちょっと好きになった。『瓷母』は確かに華やかだ。でも、それよりもっと輝かしいのは『中華の職人の技と繁栄した文明だ』」との声を寄せた。
人気の高さではなくその精神的価値を見て厳選した27点
厳選された文化財27点を全て見ると、「『清明上河図』のような有名な文化財が入っていないのはなぜ?」と疑問に感じる人もいるかもしれない。于蕾総監督は、27点をどのような原則と過程で選んだかについて、「9つの博物館がまず、それぞれ10点を選んだリストを提供し、そこから番組スタッフが厳選した」と説明した。
そして、「厳選された文化財全てに、その誕生やこれまで保存され続けてきた過程で、人を感動させるドラマがある。『千里江山図』はとても人気のある文化財で、だれもがよく知っている。一方、あまり知られていない文化財、例えば、第1回で紹介された『石鼓』は、とても重要な精神的価値を秘めており、その背後は人文の精神に満ち、今日に至るまでずっと私たちの民族に影響を与え続けてきた文化財であるため選出された。そのため、文化財の選出に当たり、博物館とも何度も話し合った。最初のリストには載っていなかった文化財も多い」と説明した。
若者のセンスを尊重し、文化財の物語を語る
年末になると、いろんなバラエティー番組が増えるが、新しい番組のジャンルである「国宝バラエティー」はどのように若者を魅了するのだろう?
文化的なバラエティーなら工夫を凝らした内容にするのが比較的容易であるものの、「文化そのものに注目しすぎて、面白みを失う」という失敗に陥りやすく、視聴者との間に溝ができ、製作者らが自己満足するだけの内容になりがちだ。その点、「国家宝蔵」は、専門的な内容を普通の人が受け入れやすい内容にし、文化財とその背後にあるエピソードを結び合わせ、「小劇場」という形式や簡単な言葉遣いで文化財を説明したり、中国東晋の書家・王羲之と中国元朝末期の水墨画家・黄公望をタイムスリップさせ、乾隆帝の美的センスにツッコミを入れるシーンを入れたりして、若者と文化財の距離を縮めている。さらに、乾隆帝のスタンプを作成するなどして、多くのネットユーザーが自発的に参加するようにもなっている。若者のセンスを尊重し、若者の好む形式で展開することが、若者の間でもこの番組が好評を博している大きな原因かもしれない。
于総監督は、「文化財が誕生した時の物語だけでなく、今どんなことが起きているかを視聴者に知ってもらいたい。そして、視聴者に文化財が私たちの近くで生きていて、私たちの生活とも関連があることに気づいてもらいたい。そうすることで、文化財に本当の意味で命の息を吹き込むことができる」と語った。
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