誰が日本の若者の夢を奪ったのか
「恋愛もしたくないのに、結婚なんてもってのほか。だから、家を買う必要もない」。長年東京で働いている筆者がよく耳にする若者の言葉だ。日本の国立社会保障・人口問題研究所がこのほど公表した世帯数の将来推計によると、2040年には単身世帯が全世帯の約4割に達し、その半分が65歳以上の高齢者だ。
一日3食は簡素にすませ、車やぜいたく品には見向きもせず、恋愛、結婚を嫌い、家は買わずに借家に住む……。最近、日本で人気のドラマに出てくる登場人物の生活は、「低欲望」と評される日本の若者を再び話題のネタにしている。日本の著名な経営コンサルタントの大前研一氏は15年に著書「低欲望社会」を刊行し、日本の若者のライフスタイルや考え方を紹介し、それに対する懸念を示した。
敗戦後の困難な時期に生まれた日本の若者は、闘志を燃やし、未来に希望を持ち、世界中の人が羨望の眼差しで見る輝かしい時代を築いた。あれから数十年が経った今、日本の若者のモチベーションは大きく低下してしまった。では、日本の若者の夢を誰が奪ってしまったのだろう?
ある経済学者は「1990年代にバブルが崩壊し、日本ではデフレ・スパイラルが起き、給料がほとんど上がっていないため、若者は将来お金をたくさん稼げるという希望を持たなくなっている」と分析している。そのような若者の財布のひもは固く、必要な時のために、必死に貯金する。また、日本の企業の雇用制度が根本的に変化し、「非正規労働者」が増加している。ある社会学者は、「毎月の給料も少ないのに、いつ失業するかも分からず、あれをしたいとかこれをしたいとか、大きな夢を持つことはできない。日本社会の階層は固定化されており、上昇したくても出る釘は打たれる。夢がないのに、若者は何に向かって奮闘すればいいのか」と指摘する。努力しても、社会的地位を上げるのは難しいため、「無欲」な生活をそれなりに送り、ボチボチと暮らせればと思う若者が増加しているのだ。
若者は自分自身でライフスタイルを決めることができるが、若者が「低欲望」生活に甘んじるままにしておくと、後々大きな問題へとつながる可能性もある。日本の学者の間では、「低欲望」の原因についてはいろんな見方があるものの、その影響については、少子高齢化が加速し、高齢者を養う社会の負担が大きくなり、日本の経済は泥沼から抜け出せないとの見方で一致する。
経済学という観点から見ると、若者の欲望が低下し、消費に消極的になると、商品が売れず、そうなると、労働者の給与も上がらない。さらに、企業は投資を控えるようになり、経済はまた、停滞、不景気に陥ってしまう。このような悪循環はいつの間にか形成され、それを打ち破るのは至難の業だ。また、社会学という観点から見ると、「低欲望」により、少子高齢化が深刻化すると、社会の持続可能な発展の足かせとなる。
若者は国家の未来。日本の若者が「低欲望」であることは、将来に希望を持てないという若者の姿を映し出していると同時に、日本の近年の経済構造改革や社会改革が思うように進んでおらず、成果に乏しいことも反映している。(文/劉軍国)
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