【思考】なぜ増える?日本の高齢者犯罪
日本ではここ数年、60歳以上の高齢者による犯罪が増え続けている。その中でも「常習犯」が多数を占めている状況に、世間の人々は驚くやら呆れるやら、だ。「悪人が高齢化したのか?それとも、高齢者が悪人化したのか?」と思わず首をひねりたくなる。高齢の犯罪者が増加の一途をたどる日本で、刑務所は、病人で溢れかえり、予算が切迫し、きわめて深刻な「予算危機」に瀕している。
【高齢者:求めることは老後の保障だけ】
英フィナンシャル・タイムズ紙が日本・法務省の統計データを引用して報じたところでは、日本における「小売店での万引き」犯罪のうち、60歳以上の高齢者による事件は35%を占める。また、60歳以上の「常習犯」のうち約40%は、「過去6回以上の犯罪歴」がある。この現状は、彼らが投獄されることを目的に罪を犯している可能性が高いことを物語っている。
多くの経済学や犯罪学の専門家は、「日本の高齢者の犯罪率が急激に上昇していることは、彼らが法律を軽視しているという単純な理解ではすまされない。より深いレベルでの経済的・社会的な原因を探る必要がある」と指摘している。
推定によると、2060年までに、日本の65歳以上の高齢者は、全国総人口の40%を上回る見通し。だが、高齢者を対象とした各種年金、社会保障、医療保障をめぐる状況は、決して楽観視できるものではない。
日本カスタムメイド製品研究センターの調査結果によると、定年退職した一般的な高齢者の年金額は年間約78万円(約6864ドル)。衣食住にかかる費用をできる限り切り詰めたとしても、生活費は年金額より25%余計にかかり、家計が赤字となる運命は避けられない。
日本の高齢者の多くは、預金額が少なく、社会保障と医療保険も十分とは言えない。さらに、孤独に苛まれる人が多く、一度罪を犯すと癖になって繰り返し、「衣食住・看病」のすべてが揃っている「刑務所暮らし」に自ら進んで身を投じることになる。
【「予算の危機」に瀕する刑務所】
増加の一途をたどる高齢者の入獄によって、日本の刑務所は、受け入れ容量不足に陥り、「予算の危機」に瀕している。
一部の専門家は、「日本の司法体系には落ち度がある。例えば、一人の高齢者が商品価格200円(約1.8ドル)のサンドイッチを盗んだ場合、懲役2年の判決が言い渡されるのが一般的だ。一方、この服役者のために刑務所が負担する費用は840万円(約7万4千ドル)に上る」と指摘した。
社会発展の研究に長年携わっているニッセイ基礎研究所社会研究部の土堤内昭雄・主任研究員は、「一部の刑務所では、高齢の服役者に対して『前倒し釈放』なる方法を検討したが、さまざまな関連法律による障害に遭遇した」と指摘、以下の通り続けた。
「家計が切迫しているため、犯罪を繰り返す高齢者の『常習犯』は増える一方だ。これは、たとえ高齢の服役者の『前倒し釈放』を行っても、彼らが再び罪を犯して刑務所に戻ってくる可能性が極めて高いことを意味している」
「日本では、社会環境そのものが、高齢者が犯罪によって生計を維持せざるを得ない状況を作り出している。日本で公的な支援を受ける人の数は、第二次世界大戦後の最高記録を更新した。高齢者の約40%は一人暮らしという状況も、悪循環の一つとなっている。彼らは、刑務所から釈放された後、収入が極めて低く、面倒を見てくれる家族もいないことから、すぐにまた罪を犯し、刑務所に戻ってくることになる」
「刑務所で服役する高齢者は今後も増加すると予想され、このまま行けば、日本の刑務所制度そのものが崩壊する恐れがある」
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