国民的スナック“アヒルの首”を若者はなぜ買わない?
ビールのおつまみと言えば…
『山の郵便配達』『故郷の香り』のフォ・ジェンチイ(霍建起)監督がメガホンをとった『ションヤンの酒家(中国語名:生活秀)』は、重慶(女流作家池莉による原作の小説では武漢)を舞台に繰り広げられるヒューマン・ドラマだ。「秀」は“展示する”“ショー”を意味する。
ざっと20年前の作品で日本でも公開されたことがある。主人公はタオ・ホン(陶紅)が扮する居酒屋の女主人で、店が売りにしているのが鴨頸(鸭脖子)、すなわち「アヒルの首」だ。アヒルの首を醤油などで煮込んだ料理で、食べられる部位は骨の周りのごくわずかだが、日本人でもやみつきになるという人は少なくない。ビールのつまみにはピッタリのスナックで、枝豆に匹敵するといってもよい。
売上、利益ともに大幅減
ちなみに、鶏やアヒルなどに香料を加えた塩水や醤油で煮込んだ料理のテーストを「滷味」(ルーウェイ)という。20年前に遡れば上海の「滷味」市場でアヒルの首はそれほど目立つものではなかった。その後、外来人口の増加も関係しているのだろう。取り扱い店は雨後の竹の子のごとく増えていき、「滷味」の中でもスパイシーな味付けが特徴の「アヒルの首」がどこでも手に入るようになった。
そんな「国民食」となった「アヒルの首」の人気がこのところ陰りを見せているという。周黒鴨、絶味、煌上煌といったチェーンブランドの業績が軒並み減速。たとえば、周黒鴨の上半期における純利益は1000〜2000万元にとどまった。前年同期の2億3000万元からじつに90%以上減少という大幅ダウンだ。売上高については前年同期比で約20%減少、店頭の販売量は約30%減少している。
コスパ悪く、ときには“刺客”にも
8月17日、「なぜ若者は鴨の首を食べたがらなくなったのか」というハッシュタグで括られた話題がネットで注目された。まず挙がったのは価格に対する不満だ。以前ならひとり飯を楽しむのに20元程度でそこそこ楽しめたのが、最近では優に40~50元の価格になるのが相場だという。
味も落ち、さらにはサービスにもディスられている。そもそも食品の量り売りでは「斤」(500グラム)がベースのはずが、アヒルの首の場合、グラム表示で書かれていることが少なくないという。したがって、油断して必要以上の量を買い込み、出費の多さに悔いることも頻繁にある。まさしく“刺客”に遭うがごとく“被害”報告が相次いでいる。
コスパが良くないのに、基本的に商品のカテゴリーは単調だ。流行りのコーヒーやミルクティーのドリンクスタンドと比べれば、インスタ映えがする素材ではない。それだけに、若い消費者にとって「アヒルの首」は人前に“さらす”生活ショーとしては、さほど魅力のないものに成り下がってしまった可能性がある。(耕雲)