飲食店経営の壁はシェフ減少?看板を3年保てば“老舗”扱い?
▶中華シェフが200万人不足?
外食産業の第一線で活躍するシェフの数が減少している。「36氪」微信公衆号によると、検索エンジンが探せない“ディープウェブ”にもとづくデータと断りつつ、中国で就業しているシェフの数はアシスタントを含め1,000万人に満たない数だという。一方、市場ニーズは1,200万人だとしている。
中国が改革開放間もない1984年に中国青年報が発表した人気職業ランキングでは、1位タクシー運転手、2位自営業者に続き、シェフが3位にランクされていた。しかし、時代は変わり、ここ数年ではシェフを養成する訓練施設で学ぶ人は減少の一途をたどっており、卒業しても進路を変更する若者が多いという。
▶ 不人気な職業となった背景は?
シェフを目指す若者が減った背景には、就業者の実質賃金が伸びていないことも大きい。シェフが得る賃金の平均は年収5万人民元から10万元の範囲に集中しているとされ、10年前とほとんど変わらない水準にある。そのくせ労働時間が長く、苦労の割には報われない職業というイメージがつきまとう。
快適な環境で“現場指揮”に当たれるのは一部のシェフに限られ、大半の就業者は室内温度が40度近くにもなる狭い場所で、1日10時間以上、黙々とノルマをこなすことを強いられる。以前なら職場には師弟関係が生まれ、師匠は弟子から敬われたものだが、現在は事情が異なってくる。先輩シェフは後輩シェフの苦労をねぎらい、時にはなだめ役に当たる必要に迫られることもあるという。さもなければ後輩シェフが職場を放棄してしまい、その補充に頭を悩ますことになりかねないからだ。
▶「標準化」の波
シェフという職業がステータスを保つうえで脅威となるのが外食チェーンの興隆だ。セントラルキッチンによる調理モデルが浸透したことで調理プロセスの標準化が進んでいく。一方、当初、ネックとなっていた冷凍物流等のインフラが2010年以降に整備が進み、コストが低減していくと、調理済み食品(惣菜)が急速に市場に出回ることになる。
その結果、かつてはシェフの双肩に委ねられていた料理の“製造現場”は、店舗が管理し、コントロールするものとなった。店舗が指定する調味料やレシピにもとづき、シェフは細分化された料理プロセスの一部を請け負うだけというケースも少なくないだろう。ちなみに西北・蒙古族料理の”ファミレス”として知られる「西贝莜面村」では「煮込み料理を多く作り、炒め物を少なくする」戦略をとる。シェフの個人的なスキルや能力に頼らなくて済む運営を続けるねらいがありそうだ。
▶調理済み食品の浸透
調理済み食品が浸透してきたことで、飲食業界のプレイヤーはみなが同じスタート地点に立つことになった。一説には私たちがフードデリバリーで口にする料理の7割は調理済み食品で占められているという。
標準化された製法による画一的な味を口にして大半の消費者はこれをうまいと感じる。人の手に介して作られたのか、機械による調理なのかはもはや判別ができない。おそらく近い将来、実際にシェフが調理した食品は10%にも及ばない日が来るだろう。
生活プラットフォームの美団(メイトゥアン)が2018年に行った統計によると、中国におけるレストランの平均寿命は508日といわれる。3年以上生き延びれば"老舗”だと吹聴できるといっても過言ではない。企業情報データベース最大手の天眼査によると、2021年に全国で登録を抹消した飲食店は100万店舗にのぼる。(編集:耕雲)
36氪 2022-09-22 08:15
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