【日本文学前导课】芥川龍之介『藪(やぶ)の中』竹林中7の2
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あの死骸の男には、確かに昨日遇って居ります。昨日の、――さあ、午頃でございましょう。場所は関山から山科へ、参ろうと云う途中でございます。あの男は馬に乗った女と一しょに、関山の方へ歩いて参りました。女は牟子を垂れて居りましたから、顔はわたしにはわかりません。見えたのはただ萩重ねらしい、衣の色ばかりでございます。馬は月毛の、――確か法師髪の馬のようでございました。丈でございますか? 丈は四寸もございましたか? ――何しろ沙門の事でございますから、その辺ははっきり存じません。男は、――いえ、太刀も帯びて居れば、弓矢も携えて居りました。殊に黒い塗り箙へ、二十あまり征矢をさしたのは、ただ今でもはっきり覚えて居ります。
那死去的男人,我的确在昨天遇见过。昨天的……嗯,大概是晌午时分吧。地点是从关山(京都府与滋贺县的边界)到山科的途中。那男人和一个骑马的女人,正走向关山方向来。因那女人脸上垂著苎麻面纱,我没看清长相。我只看见她身上那件外红里青,好像是秋季衣裳的颜色。马是桃花马……好像是鬃毛被剃掉的和尚马。您说马有多高?大概有四尺四寸高吧?……因为我是出家人,对这种事不大清楚。男人是……不不,那男人不但带著佩刀,也携著弓箭。我现在还记得,他那黑漆的箭筒里,插著二十来支战箭。
※註:牟子=からむしの略。いらくさ科の多年草。麻の別種。布を織る材料。
萩重ね=重ねの色目の名。表は紫がかった紅色、裏は青。秋に用いる。
月毛の=葦毛でやや赤みを帯びた馬の毛色。
法師髪の馬=剃髪している、僧形風の馬。
沙門=「さもん」とも言う。出家して修行する求道者。
箙=矢を入れて右腰につける武具。
征矢=鋭い鏃をつけた、戦闘に用いる矢。尖り矢。
あの男がかようになろうとは、夢にも思わずに居りましたが
、真に人間の命なぞは、如露亦如電に違いございません。やれやれ、何とも申しようのない、気の毒な事を致しました。
我真是做梦也想不到那个男人竟会落得这种下场,人的生命,真是如露亦如电,一点也不错。唉,这该怎么讲呢?实在怪可怜的。
※註:如露亦如電=露や電のすぐ消えるように、きわめてはかないたとえ。
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