新书:楊継縄/辻康吾編《文化大革命五十年》
著者楊継縄 編 ,辻 康吾 編 ,現代中国資料研究会 訳
出版社:岩波書店
刊行日:2019/01/29
ISBN:9784000613071
Cコード0022
体裁四六・上製 ・カバー ・296頁
定価:本体2,900円+税
この本の内容
文化大革命の勝利者は誰だったのか.劉少奇ら実権派は文革派の犠牲となっただけだったのか.文革発動から五十年,その歴史を冷静に振り返るとき真の文革像が見えてくる.文革の勝利者は実権派であり,敗北者は毛沢東を頭とする造反派であった.流血は文革終了後も続き,犠牲者数は公表された数百倍にものぼる.文革を通じて現代中国の真実に迫る.
目次
日本の読者へ
一 文革から五十年,だがその研究はまだ十分ではない
二 改革開放後に現れた社会的不公正
三 毛沢東左派は社会的不公正をどう見ているか
四 自由主義者は社会的不公正をどう見ているか
五 執政当局はこの二つの動きにどう向き合っているか
序文
一 「歴史決議」は政治問題に関する決議
二 文革史を書くことの難しさ
凡例
中国地図
第一部 文革の起源から終焉まで
第一章 文革の予兆
第一節 文革の起源
第二節 導火線
第三節 文革への障碍を除く
第二章 文革の正式発動から全面的奪権へ
第一節 文革の正式発動
第二節 劉少奇,鄧小平が右派を捕らえる
第三節 八期十一中全会
第四節 「老紅衛兵」の「四旧」一掃
第五節 ブルジョア階級反動路線批判
第六節 全面的奪権
第三章 「二月逆流」と武漢事件
第一節 「二月逆流」と「二月鎮圧」
第二節 「鎮圧」に対する反撃
第三節 武漢事件と毛の文革戦略の転換
第四節 全国の山河は紅一色
第四章 権力者の大衆弾圧
第一節 「五・一六反革命集団」分子の摘発・批判・審査
第二節 階級隊列の整頓
第三節 「一打三反」運動
第四節 集団虐殺
北京近郊の集団虐殺/湖南道県の大虐殺/広西チワン族自治区の大虐殺/他地域での集団虐殺
第五章 九全大会から林彪事件まで
第一節 九全大会
第二節 九期二中全会
国家主席は必要か/「政治的武器」について/誰が林彪の後継者か
第三節 「批陳整風」運動から林彪事件まで
第六章 林彪事件
第一節 「五七一工程」
第二節 事件直前のクーデター組織の動き
第三節 周恩来側の阻止行動
第四節 林彪墜死と前後の情況
第五節 林彪事件の謎
第七章 毛周対立
第一節 毛の右傾批判と周の左傾批判
第二節 キッシンジャーの支援提案
第三節 周恩来批判と鄧小平の職務回復
第八章 「批林批孔」から「四五運動」まで
第一節 批林批孔運動
批林批孔運動の背景/批林批孔運動の発動
第二節 毛の周批判
第三節 「右からの巻き返しに反撃する」運動と『水滸伝』批判
第四節 周恩来の死と「四五運動」
周恩来の死/「四五運動」/毛の死,十月政変
第九章 文革の幕閉じる
第一節 毛沢東死去
毛の晩年と生涯/毛死去の報道
第二節 毛死去の受けとめ方
第十章 一触即発
第一節 二つの政治勢力
異なる政治的方向/弔問式の様子/張春橋の所感
第二節 毛死去前後の江青
天津と大寨の江青/毛の文書をめぐる攻防/政治局会議での激論
第三節 華国鋒と「四人組」
文革派の現実/「四人組」の危機感/「既定方針通りにやれ」
第十一章 十月政変
第一節 「四人組」・文革派処分の戦略
強硬措置の大義名分/葉剣英の考え/華国鋒・李先念・葉剣英の動き
第二節 江青の動向
「投鼠忌器」/毛の死に際しての江青
第三節 「四人組」逮捕の実行
逮捕の準備/王洪文・張春橋・姚文元の逮捕/江青の逮捕
第四節 メディアの制圧
中央人民放送局の接収/新華社・人民日報社の接収/緊急政治局会議
第十二章 鄧小平の反応と上海の情況
第一節 鄧小平の反応
鄧小平一家の喜び/華国鋒宛の直筆書簡/各地の慶祝デモ
第二節 文革派の基地,上海の情況
馬天水ら消息不明に/上海市幹部の緊急会議/中央の説得
第十三章 十一全大会と林彪・四人組裁判
第一節 十一全大会
第二節 「林彪・江青反革命集団」公開裁判
第二部 ポスト文革の中国
第一章 ポスト文革の大規模な摘発・批判・審査
第一節 冤罪捏造誤審事件の名誉回復
第二節 文革派の摘発
第二章 摘発・批判・審査運動の拡大(一)
第一節 河南省の運動の実態
第二節 雲南省の運動の実態
第三節 天津市の運動の実態
第三章 摘発・批判・審査運動の拡大(二)
第一節 湖北省の運動の実態
第二節 山西省の運動の実態
第三節 四川省の運動の実態
第四章 摘発・批判・審査運動の拡大(三)
第一節 湖南省の運動の実態
第二節 吉林省の運動の実態
第三節 黒龍江省の運動の実態
第四節 上海市の運動の実態
第五節 浙江省の運動の実態
第六節 福建省の運動の実態
第七節 江西省の運動の実態
第八節 甘粛省の運動の実態
第九節 軍隊の運動の実態
第十節 公安部の運動の実態
第十一節 文革期の思考と手段を使って
第五章 胡耀邦,摘発・批判・審査の拡大を阻止
第一節 胡耀邦の警鐘
第二節 曹操の故事
第六章 「三種人」の清算とその矛盾
第一節 鄧小平の号令
第二節 「三種人」の摘発・批判・審査
第三節 文革中の政治的態度の調査
第七章 「三種人」清算のダブルスタンダード
第一節 老幹部と幹部の子弟には寛大
第二節 陳楚三の回想
第三節 孔丹,董志雄の陳雲あての手紙
第四節 官僚集団のための逃げ道
第八章 大規模な摘発・批判・審査運動のプラス効果
第一節 冤罪捏造誤審案件の名誉回復
第二節 必要な処罰の執行
第三節 大虐殺事件の善後処理
第九章 官僚体制下の改革開放
第一節 文革後の主要な四大政治勢力
第二節 華国鋒の「二つの凡て」
第三節 奇怪なねじれ現象
第四節 真理の基準の大議論
第十章 逆巻く民主の怒濤
第一節 「西単の壁」
第二節 理論工作討論会
第十一章 現代版「中体西用」
第一節 改革開放への共通認識
第二節 「四つの基本原則」と壁新聞の非合法化
第三節 「建国以来の党の若干の歴史的問題についての決議」
第四節 「一つの中心,二つの基本点」
第十二章 権力市場経済制度
第一節 官僚人員の過剰
第二節 権力市場経済制度の出現
第三節 改革が生み出した貧富の格差
第十三章 階層の固定化と階層間の衝突
第一節 集団世襲
第二節 「窮二代」の悲劇
第三節 階層間の摩擦・衝突の激化
第十四章 権力の抑制均衡と資本の制御
第三部 文革五十年の総括
第一章 毛沢東の文革発動の動機
第一節 「天地翻覆」
第二節 文革発動の要因
第三節 ユートピア建設への露払い
第二章 毛沢東路線のイデオロギー的背景――継続革命論
第一節 官製イデオロギーの呪縛
第二節 中共のイデオロギー
第三節 継続革命論
第四節 イデオロギーがもたらした悲劇
第三章 文革の根本原因は建国後十七年の社会制度
第一節 全体主義制度
第二節 毛沢東の「官僚主義者階級」への不満
第三節 ジラスの「新しい階級」への幻滅
第四節 官僚集団こそが勝者,毛沢東は敗者
第四章 文革の代価,遺産と社会の要求
第一節 旧制度の完全復活
第二節 文革が残した「遺産」
第三節 立憲民主制度の必要性
編者あとがき 私と文革
文化大革命関係年表
主要中国人人名注
訳注
原注
人名索引
著者略歴
楊 継縄 (よう・けいじょう ヤン・チーション Yáng Jìshéng)
1940年湖北省生まれ.清華大学卒.1968 年新華社記者.1984年全国優秀新聞工作者に選出.2001年新華社退社後,『中国改革』誌などの編集者.2003年『炎黄春秋』副社長.2000年『中国各階層分析』(香港),2004年『中国改革年代的政治闘争』(同)など多くの著書を発表したが,次第に当局に警戒され始めた.代表作の2008年『墓碑――中国六十年代大飢荒紀実』(香港・天地図書有限公司,邦訳『毛沢東大躍進秘録』,文藝春秋,2012年)は世界的に注目され,多数の賞を受賞.だが当局の圧力は強まり2015年『炎黄春秋』誌の離任を迫られた.2016年本書の底本となった『天地翻覆――中国文化大革命史』上下(香港・天地図書有限公司)を発表.
【編者】
辻 康吾 (つじ・こうご)
1934年東京生まれ.1959年東京外国語大学中国語科卒.1961年立教大学法学部卒.毎日新聞社入社.香港,北京特派員,編集委員を歴任.1985年東海大学教授,1999年獨協大学教授.著書に『転換期の中国』(岩波新書),『文化大革命と現代中国』(共著,同)など,訳書に蘇暁康・王魯湘編『河殤』(共訳,弘文堂),蘚暁康ほか『廬山会議』(毎日新聞社)など多数,また葛兆光『中国再考』(岩波現代文庫)監修.現代中国資料研究会代表.