武内房司編『中国近代の民衆宗教と東南アジア』出版
作者:武内房司 編
出版社:研文出版
出版年月日:2021/03/30
ISBN:9784876364626
页数:266
定価:本体4,000円+税
本书简介
華南沿岸からベトナム・マレーシア・シンガポール等への移住にともない出現した華人系民衆宗教の伝播・定着とその変容・現地社会への影響を現地調査を踏まえ考察。
作者简介
武内 房司,1956年生まれ
1985年3月 東京大学大学院人文科学研究科博士課程東洋史学専修課程単位取得中退
1985年4月 高知大学人文学部専任講師
1990年4月 学習院大学文学部助教授
2001年4月 学習院大学文学部教授,現在に至る。
何を研究テーマとしているか,と訊ねられれば,18~19世紀を中心とする西南中国社会研究であると答えることにしています。大学で中国史の勉強を始めた頃,中国史研究の主流は経済の最先進地帯とされた江蘇省・浙江省など江南地域を対象とするものでした。ただ,中国全体を理解するためにはより内陸にも目を向ける必要があると感じ,以来,雲南・四川・貴州・広西といった西南中国の歴史に興味を持つようになりました。
西南中国の特徴は,タイ やヴェトナムなどの東南アジアに連なる民族が多数居住し,多様な文化を育んできたことです。これまで,中国やヴェトナムなどの国民国家において語られるナショナルヒストリーの枠組みでは往々にして切り捨てられるかゆがめられて伝えられる傾向のあった18世紀から20世紀にかけての中国西南諸民族,たとえば苗族やタイ族などの民族の歴史を漢民族の移住史や地域開発史と絡ませながら研究してきました。歴史の研究は,広大な領土を獲得し専制権力を発展させた民族や国家の歴史だけをかたればよいというものではありません。多数の民族が複雑にまじりあいながら共存してきた西南中国のユニークな歴史は,今日もっと注目されてよいように思います。
非漢民族の歴史の研究の難しさは,漢民族の立場で書かれた王朝側の史料に依拠せざるをえないことです。そこでこれまで,できるだけアーカイブや農村に埋もれている民間文書の掘り起こしにつとめてきました。貴州の苗族たちが残した契約文書を整理する仕事はその過程で生まれたものです。契約文書などの民間文書には,苗族などの少数民族が伝えてきた心性や世界観が息づいています。同時に,マイノリティ研究にとって民間文書やアーカイブが記憶や歴史の復元にいかに大切なものであるかも知ることができました。
第二のテーマは,18・19世紀を中心とする民間宗教結社の研究です。西南中国はフロンティア社会としての特徴も持っています。そこに移住した漢民族は辺疆社会で生き抜くためにさまざななネットワークを発達させてきましたが,民間宗教はそのなかでも大変重要な役割を果たしてきました。興味深いことに,西南中国ではぐくまれた民間宗教結社は19世紀後半以降,中国全土へ,さらには東南アジア華僑社会やヴェトナムなどの漢字文化圏に伝播・浸透していく動きが見られました。こうした国境を越える宗教者の軌跡をたどることが現在進めている研究の一つの柱となっています。
目录
総論:近代ベトナムの華人社会と宗教運動
武内房司
第1章 近代華南の宗教運動:青蓮教東初祖派の登場
武内房司
第2章 「明師道」の成立:ベトナムに根づく近代華南の民衆宗教 武内房司
第3章 カオダイ教:三教合一運動のベトナム的展開
武内房司
第4章 独立以降から公認化までの明師道の歩み―明師道に関するベトナム国内の研究と私の聞き取り調査― 今井昭夫
第5章 近代東南アジアにおける「先天大道」の伝播:同善社と南洋聖教会
小武海櫻子
第6章 日本統治初期のシンガポールにおける紅卍字会の救災活動 ―『新加坡道院訓文』の発見とその分析―
持田洋平
付録1 厳璩『越南游歴記』訳註
武内房司
付録2 ベトナム明師道系仏堂所蔵漢喃経巻目録稿
武内房司