【行くぜ深圳】穂深城際線開業で深圳方面は便利になったか?
【行くぜ深圳】穂深城際線開業で深圳方面は便利になったか
2019年12月15日、広州東駅と深圳宝安国際空港(深圳機場駅)を結ぶ穂深城際線が開業した。広州から同空港まで最速77分で結び、これまで鉄道がなかった東莞市西部の各鎮や深圳市西部の各鎮を経由するため、沿線に住んでいる方にとっては朗報だ。
事前に切符を発券して駅入場
切符は東駅2階の長距離列車切符売り場窓口で発券
てっきり途中の増城区新塘が出発地と思ったら、見事に広州東駅から出発してくれた穂深城際線。国慶節直前の開業を1度延期しているため、春節明けまで開業しないかと諦めていたが、数日前に内部リークによる15日の開業のアナウンスがあった。
情報によると、同路線は1日35本運行するという。運行区間は約76㎞で運行時速は140㎞。
このときは、広東ではマイナーな中鉄銀通カードが使えるのか、深圳空港まではどれくらい料金かかり、片道どれくらい時間がかかるのか、快速を設定しているので最短何分で到着できるのかとワクワクしながら開業を待った。
そして開業当日、切符予約サイトの12306を確認した。えーと、1日の運行本数は16本※、価格は片道81元…(139㎞の広深線より短いし高いな)、大体、30〜1時間間隔で運行、最速は77分だけど、最遅は2時間…(随分遅くね)。まあこんなもんか。メディアによる大本営発表と実在の運行情報の乖離は今にはじまったことはないが、努力目標として受け取っておこう。
そして、当日は中鉄銀通カードが使えるか下見を兼ねて広州東駅に行ってみた。
※12月20、21日の運行では14本まで減っていた
無慈悲の10分前打ち切り案内
穂深城際線の待合室は長距離列車と同じ4階の第4待合室。広深線と同じ待合室(第1)、もしくは汕頭や梅州行き待合室(第2)だろうと淡い思いを描いていたら、こちらも裏切られた気分だった。待合室に入る手前に「第4待合室は発車10分前に改札を打ち切ってしまうよ」と案内があったが、この意味は乗車当日理解できた。
穂深城際線は電子チケットなので、予め12306で予約をしておいて、駅に入場するときパスポートと予約画面を見せればそのまま駅に入れる確信はあった。
しかし、15日に深圳空港から広州東まで乗車した知り合いから、「途中下車した駅では、切符がないと駅の中に入れない」と連絡が来たため、念のため17日乗車の切符を12306で予約して発券することにした。中国ではこういうイレギュラーなトラブルがあるから嫌になる。
予約列車は9時10分発のC6731次で深圳空港まで77分の最速タイプ。
しかし、ここからが大変。職場近くの切符代理販売所では、その日に限って機械がトラブルを起こし発券できずじまい。翌日の朝行ったら結局発券できず。仕方なく東駅2階にある長距離切符売り場に行った。駅到着は発車30分前。ガラガラだったのが救いだった。
広州東駅4階にある専用待合室と、身分証が必要な自動改札
駅の中に入って4階まで登ると、穂深城際線専用の待合室があった。
椅子に座っている乗客は20名弱。本当に空港に向かうのかスーツケースを持っている乗客もいた。
改札スタートは発車15分前を切ったあたりから。自動改札は、中国人の身分証のみ対応しており、切符だけでは受け付けてくれない。この辺すごくややこしい。
外国人はどうすればいいのかその場にいた駅員に聞いたら、人工改札に通された。切符とパスポートを見せるだけだが。電子切符なら予約画面とパスポートを見せればOKと…信じたい。
1番ホームならうれしいのだが、よりによって7番線ホームまで歩かせるとは
そして前日の改札10分前締め切りの意味がわかった。1番線の真上にある待合室から穂深城際線の乗車口は7番線と遠いから余裕を持たせてこいとう意味か。でも広州南駅や上海虹橋駅の待合室の広さに比べればそこまで離れていないんだけど。だったら発車10分前には駅入場を打ち切ると書いてあれば納得いく。
車両はCRH6A。発車3分前に扉が閉まる
CRH6A。広深線を走るタイプの簡素版
7番線ホームには通勤電車タイプのCRH6Aが停車していた。このCRH6Aは全国各地の都市鉄道で使用されており、先輩格のCRH2(日本の新幹線が由来)などを駆逐しはじめている。そういや、この列車は自由席なので空いていれば好きな場所に座れるメリットがある。
シートは固定されており、やや窮屈。前席の背もたれには荷物を置けるシートトレイはなくノートパソコンで仕事をするにはどうすればいいのかと思った。そのくせ、各シートの下の通路方面には充電用の電源があったりする。
CRH6Aの車内。前席の背もたれにはシートトレーはないが、各シートの下の通路側に電源がある
せっかく開業しても、何か思ったこととチグハグ、ホスピタリティに欠けるというより特にあれこれ考えず鉄道をただ通すことに一生懸命になっている感じがする。
急に開業が決まった理由が、もしかして沿線におっ立てたマンション会社からの(開業遅延で部屋の価値が下がる)クレームもあったりして(笑)。
発車3分前にいきなり扉が閉まった。流石に改札とホームでは駅員が無線でやり取りをしているから大幅に遅刻しない限り乗れないことはなさそうだ。
線路はぐるっと南に方向転換し、建設中の駅の中に入る
列車は発車後、広深線の線路を使わず、香港直通車や長距離列車、貨物列車が走る線路を使う。速度はあまり出ていない。せいぜい100㎞ぐらいの感じだ。
しばらく広深線に沿って走るが、新塘区に入り日本人も多く住む鳳凰城付近を過ぎたあたりで速度を落として左に曲がったと思いきや思い切り右に弧を描く速度で新塘南駅に向かい、完成すれば高さ260m、45階になるオフィスビルやホテルが入る予定の複合施設(凱達爾印象城)が見えてきた。
ここが完成すれば、同駅もキラキラ大都会の仲間入りになるのだが完成は後数年後だろう…。
同駅を通過したが、ホームは2島あり、内側の2線は広州空港からの新線が停車できるような設計になっている。
そして東莞へ
東莞中堂手前の車両基地は空っぽで、予備の列車はゼロだった
さらに少し走ると、珠江に流れる東江の支流を渡り、ここから東莞市に入る。すぐ左手には同路線の車両基地があるが、往復で見たら1編成たりとも車両を見かけなかった。車両が足らないから運行本数も少ないのだ。
将来広州南駅からくる路線が同駅で合流する
中堂駅通過後しばらく農園らしき場所を走り、次に広州南駅から東莞西駅と接続する建設中の佛穂莞城際線が見えてきた。佛穂莞城際線は駅に入る手前で線路を分岐させて新線方面と接続するデザインになっている。ようやくここで2分間の停車。
佛穂莞城際線と同駅から恵州まで向かう莞恵城際線のホームは、穂深城際線の上で立体交差するように作られている。将来は、佛山西駅を発し広州南駅と東莞西駅を経由してそのまま恵州に向かう列車も誕生する。同駅で中鉄銀通カードが使える同路線との乗り換えをしてみたかった。
新塘南駅と東莞西駅は今後珠江デルタ地域を網羅する鉄道網の重要なハブとなる。
沙田大橋を渡る
東莞西駅発車後は、再び何もない農村地帯を走る。珠江に注ぎ込む東江の支流も多い。
洪梅駅を通過すると、第2広深高速道路(広深沿岸高速)が見えてきた。4年前からずっと広州戻りの高速バスに乗って道路側から建設中の線路を何度か見てきたが、まさかこの線路が穂深城際線だったとは感慨深い。沙田大橋を渡り、東莞港駅を通過した後、列車はそのまま左に90度カーブに入り地下に潜る。
同路線の地下区間は、厚街駅から虎門東駅と深圳機場北駅と深圳機場駅が該当する。厚街駅は中心地から南方に大分離れており、河を隔てた沙田の方が近そうだ。
虎門北駅は広深港高鉄の虎門駅と接続するのか気になって仕方がない。幹線道路の莞太路沿いにあることは間違いなさそうだが、地下駅なので場所が特定しづらい。
質素な深圳空港駅に到着、ここからが大変
ターミナルになっているかと思いきや2番線までしかない深圳機場駅
そして、乗車から77分掛けて深圳空港の駅に到着。規模の大きい駅かと思ったら、2番線ホームしかない質素な作りだった。
深圳機場駅からは地下鉄11号線と空港T3と接続しているが、そこまで着くのに600mほど歩かされる
同駅は深圳空港のT3に位置し、深圳地下鉄11号線の機場駅と接続する。
しかし、一旦駅改札を出て(このときは切符とパスポートの両方を見せた)、11号線の駅に向かおうとするが…遠い!明らかに600m以上ある通路をひたすら歩く歩く歩くが、なかなかゴールが見えないので困った。
1往復するだけで1.2㎞。5往復もすれば立派な運動になる。
外国人は深圳機場駅の自動券売機が使えない。チケットレスなので予約画面を見せれば待合室の中に入れる…はず
そしてここでいろんな問題が発生。まず復路(11時5分発C6732次)の切符を買おうとした。最初は買える状態だったのだが、数分間放置して10時40分に予約をしようとしたら、「この列車は時間が過ぎているため予約できません」と来た。どうやらこの路線だけ発車30分前までに予約しないと次発車する列車に回されてしまう。次の発車は11時48分発なので同駅であと1時間は足止めを食らう羽目になった。
同駅にあった自動券売機は、外国人パスポートに対応しておらず、乗車した切符が欲しかったため、窓口の対面販売で買うことになったのだが、ここには自動券売機での切符の買い方を知らない年寄りの列ができていた。列と言っても5、6名なのですぐに順番が来ると思ったら、いちいち販売員にどこどこは停まるのか?といろいろな余計な質門をしてくるため、1人を捌くのに時間がかかる。
次の列車は12306で予約せず窓口で直接買った。支払いは微信支付と言ったら、ガラス越しのディスプレイに出てきたQRコードをスキャンする。最初に出てきたのはレシートで、「発票はできる?」と聞いたら切符を発券してくれた。
この列車チケットレスだったことをすっかり忘れていた。
切符を買うと最初レシートが出てくるので、発票が欲しい方は窓口で「請給我発票」と言おう。パスポートは白い機械の読み取り機で使える
駅に入るときはレシートを係員に見せて入ったので、12306の予約画面で通れるのかどうか分からない。多分予約画面とパスポートを見せれば通れると思う。
とうか、外国人にとって急ぎのとき発券が必要で窓口が混んでいると詰むのでさすがにそれはないか。
自動改札では脇にある白い読み取り機械の読み取り画面にパスポートのIDページを読み込ませるときちんと認証できた。
鳳凰城からのアクセスは…?
戻りの列車(C6720次)は、行きの快速タイプと打って変わり、全15駅のうち11駅に停車するほぼほぼ各停タイプ。
発車後、加速が遅いので思わず一眠りしてしまったほど。
新塘南駅のホーム。建設中の広州白雲国際空港行きは途中で線路が止まっている
戻りは13時4分に到着した新塘南駅から地下鉄13号線に乗り、途中魚珠駅で5号線に乗り換えるつもりだった。建設中の新塘南駅は、13号線新塘駅から20mほどの距離にあり、行きやすかったが周囲には売店もなく空腹が一番辛かった。
途中車内から見かけたスーパーは駅の反対側にあり、建物自体が建設中で通り抜け出来ないため、遠回りをしないと行けそうになかった。
完成すればキラキラ未来が約束される新塘南駅の複合施設の写真。お納めください
建物は内部が全然出来ておらず、骨組みこそ出来ているものの、それ以外はむき出し部分が多く、完全な完成まではあと5年は掛かりそうだ。
新塘駅から燕塘の会社まで地下鉄3本とバスを乗り継いで1時間40分。合計移動費は10元。
穂深城際線の広州東~新塘南までは片道38元と安くないが、23分で行けるのは魅力的。これは結構大いに悩む。
鳳凰城からだとどうだろう?ここから新塘南駅まで4.3㎞で車だと12分、公共バスだと乗り場の鳳凰苑南門駅まで600mほど歩くが増城26路/372路のバスと徒歩と合わせると30分ぐらい(新塘地鉄駅下車100m徒歩)。
百度地図で鳳凰城から新塘南駅区間を調べてみた
ちなみに鳳凰城から天河区までバスを使うと(終点はワンリンクの裏)約60分で片道10元だが、経由する広園快速は早朝と夕方は地獄のような大渋滞がほぼ毎日起こるため、38元かけても穂深城際線を使ったほうがいいかもしれない。
同路線の強みは電子チケットだということだ。事前に12306で買っておけば、発券の手続き不要で列車に乗れるし、渋滞に遭わなくて済むメリットがあるが、移動と乗車でトータル1時間だとあまり変わらないか。
珠江新城の5号線沿線に住んでいる方は新塘を目指さず広州東を目指したほうが正解だ。
正直、あと数カ月もしたら車両と本数も増えて利用価値はもっと高まる可能性もあるし、何より広州から東莞西部、深圳西部、深圳空港及び深圳宝安福永に向かう人にとっては貴重な路線になるだろう。