【分析】日本介護トップのニチイが中国進出 中国に合うか?
今後の前途に光がみえる中国介護市場をめがけ、たくさんの外資系ブランドが争うように中国市場に進出している。日本の介護サービストップのニチイも最近、独特の短時間・訪問介護サービスモデルで中国市場に打って出た。だがこのモデルは介護職員から研修費用を徴収し、顧客からも高額のサービス料を取るもので、業界では「中国には合わない」との懸念が瞬く間に広がっている。
▽ニチイ独自の介護サービス
ニチイ中国法人の日医(北京)商貿有限公司の増田崇之会長の説明によると、「ニチイブランドは3年ほど前に中国に上陸し、これまでは主に合併再編を通じて事業の配置を進めてきた。現在、北京、上海、広州の3カ所に全額出資の管理会社があり、その傘下にいくつかの合弁会社がある。今年4月末までに、グループは介護事業を正式にスタートさせた」という。
増田会長は、「私たちのいう介護とは中国でいう『養老』(介護の意味)サービスとは明らかに異なるもの」と繰り返し強調し、「中国では『養老』といえば普通は高齢者の世話をすることだが、日本では(介護を担うのは)専門的な知識と技能を備えた『介護』職員であり、早くから社会的に認められている。ニチイがうち出す日本式介護サービスは、専門的な評価と支援を通じて、高齢者に備わった基本的な日常生活を送る能力をできるだけ発揮させ、高齢者が『自立した生活』を送れるよう支援することを基本理念に据えるもの」と説明する。
なぜ今、中国事業を拡張するのか。ニチイが照準を合わせるのは在宅介護の需要増大などのチャンスだ。「2016~2020年中国介護産業投資分析・見通し予測報告」によれば、中国の介護産業には産業チェーンが長い、関連分野が広いといった特徴がある。16~20年の介護市場での消費額は10兆元(1元は約16.3円)を超え、年平均増加率は17%に達する見込みだ。また今後20年間で、中国介護産業の規模は20兆元を超え、中でも在宅介護が飛躍的に発展することが予想されるという。
意欲に燃えるニチイだが、中国でさまざまな現実的問題に直面する可能性がある。社会全体で介護サービスの受け入れ度が高くないこと、介護職員の不足、中日の消費習慣の違いなどで、日本で成熟したモデルも中国では合わない可能性がある。
▽人材が大きな難題
ニチイのコア競争力は人材育成プランにある。介護サービスを提供する中で、専門の評価担当者(ケアマネージャー)が高齢者の状況を分析し、最終的なケアプランを作成することになっている。
注意すべき点は、ニチイがうち出す専門的介護職員は長年の実務経験が必要であり、企業は長期的な育成を行い、育成にかかる費用は職員自身が負担するということだ。増田董事長は、「介護職員1人を育てるのに大体7千元かかる。この費用は働く中で少しずつ徴収していく。職員の育成と顧客へのサービスの2本建てで費用を徴収する、これがニチイが日本で展開するビジネスモデルだ。こうした方法を取るからこそ、企業は職員を厳しくふるいに掛ける。基本的に大卒以上しか取らない」と話す。
業界関係者の多くが、ニチイの介護モデルは中国市場の現状と大きな開きがあると指摘する。たとえば、中国の高齢人口は今や2億人を突破し、毎年860万人のペースで増加し、介護職員は少なくとも1200万人が不足する。こうした現象を生み出した主な原因は、中国の伝統的なものに見方にある。多くの人が介護職員を他人にかしずく仕事と考え、尊敬しない。社会的にも重視されているとはいえず、看護師と似た仕事内容ながら、社会的地位では看護師にはるかに及ばない。介護職員の給与の低さも人材不足の一因だ。
ある業界関係者は、「中国では介護はレベルの低い仕事をみなされることが多く、従事者の流動性が極めて高く、国家資格もない。こうした背景の下、大卒者を呼び込んで自腹で研修を受けさせ長期的に介護の仕事をさせるのは非常に難しい」と指摘する。
▽中国には合わない可能性
ニチイの人材活用モデルがまだ広く認められていないだけではなく、中国で展開する分単位での短時間の介護サービスモデルも中国人にはあまり受け入れられないとみられる。増田董事長は、「中国の『養老』サービスの基本は家庭滞在型だが、ニチイは主に短時間のサービスを提供する。90分が1単位で、費用は170元前後、高齢者のニーズに合わせて、入浴介助や床ずれのケアなどのサービスを提供する」と話す。
実際、ここ数年は外資が中国市場での布陣を相次いでスタートし、米国、フランス、日本などの介護事業者・機関は意欲満々で、中国介護市場でより大きなパイの分け前にあずかろうとしている。外資ブランドの多くは中国で介護施設を建設する道を選択しており、このような成熟した施設型介護モデルに比べ、ニチイが提供する介護サービスはまだ新しく、市場で成熟するには長い道のりを歩まなければならないといえる。
おススメ
フードデリバリー・ビッグデータ 中国で「残業が一番多い都市」はどこ?
本微信号内容均为人民网日文版独家稿件,转载请标注出处。