開業わずか4年で「中国お茶ドリンクベスト10入りブランド」に選ばれた「奈雪の茶」の快進撃【その２】

中国企業成功の

背景を読み解く

“国潮成功的路 ”

奈雪の茶

Vol.1 

開業わずか4年で

「中国お茶ドリンクベスト10入りブランド」

に選ばれた「奈雪の茶」の快進撃【その２】

80年代生まれの若き女性経営者がプロデュースし、高級お茶ドリンクブランドとしての知名度を瞬く間に世に広めた「奈雪の茶」。その成功を支える３つの具体的な経営戦略を紹介する。

01

高品質の原料を安定して確保するためにサプライヤーチェーンの改善を実施

「奈雪の茶」が理念としているのが品質、食品の安全、ファッション性の追求だ。そのためには安定的に高品質な原料が調達できる体制が前提となる。同社では、250社以上の優良なサプライヤーと連携をとりながらサプライチェーンの維持に努めることで、アップストリームのサプライヤーによる持続的なニーズに応えている。

　注目すべきは中国各地に自営の茶畑、果物園、フラワーガーデンを運営していることだ。巨額の投資によって１６５ムーのいちご園を開設したのも、オールシーズン安定した原料の確保を目的としている。原料の標準化、サプライヤーチェーンの規模拡大のうえでもメリットは大きい。いちご以外にも、季節ごとにさまざまな果物を原料とした新商品の開発に道を開いた。

▲西湖の龍井茶や阿里山の初露など、厳選した茶葉を使用している

▲新鮮なイチゴを使ったメニューは女性からの支持が熱い

02

オンライン上の複数のプラットフォームを積極的に取り入れた販売戦略

　目まぐるしくトレンドが変化するドリンク市場。「奈雪の茶」は、店舗販売の促進だけに留まらず、オンライン上のプラットフォームを利用した販売やPR活動を融合させることで集客の最大化を目指している。微信のミニプログラムやアプリを通したデリバリーサービスへの対応、微信モール、天猫モールなどへの出店、ライブによる販売プロモーションも奏功し、業績を上げている。

　また、会員システム制度を設け、ポイントショップ、電子ギフトカード、共同購入などの特典を用意することで、会員のリピート消費につなげることにも成功した。2021年5月時点で「奈雪の茶」の微信会員システムに登録している会員者数は3,500万人に達しており、オンライン受注が売上全体の約70%を占めている。

　SNSの積極的な活用にも定評がある。著名なインフルエンサーである薇娅、羅永浩とスマホライブで提携し、PRキャンペーンを実施。「3秒で14万杯の売上達成」「カードの販売10万、売上1,000万元」といった華々しい“戦績”を残した。数字や客観的事実といった“ファクト”ベースの情報が重視される市場トレンドへの配慮が伺える。

03

IPコラボビジネスを使った

ブランディング戦略

2017.04

奈雪の茶✖︎ピカソ&ダリ展

スペインの二大巨匠パブロ・ピカソとサルバドール・ダリ。2人の作品はパリの「ピカソ美術館」、フィゲラス（スペイン）の「ダリ美術館」にそれぞれ多く所蔵されているが、二大巨匠連名の特別展が催され、真作が披露されるケースは世界広しといえ滅多にあることではない。

しかし、2017年4月、「奈雪の茶」はこれを見事に成し遂げた。湖南省の長沙市で開催した「ピカソ&ダリ展」は大反響で「奈の雪」ブランドの実力をアピールするには十分だった。作品とコラボした限定記念グッズのマグカップの売れ行きも上々で人気を博した。

2018.05

奈雪の茶✖︎鳳凰新聞

ネット版バレンタインデー（告白デー）に当たった2018年5月20日、「奈雪の茶」が鳳凰新聞とコラボして発表したのが「未来のTA（彼女or彼）はどんな風？」をテーマにした占いゲームだった。「奈雪の茶」は、お茶ドリンクブランドとしての存在に留まらず、若者の生活文化のアイコンとしても認知されたのだ。

2018.05

奈雪の茶✖︎OPPO

2018年5月、上海国際音楽村で開催されたスマートフォンメーカー「OPPO」 主催の“Live For Real OPPO紅蓝音楽フェスティバル”に協賛した「奈雪の茶」。会場のライティングカラーをイメージした７時間限定販売のドリンク商品、「紅蓝CPソーダ茶」が話題を呼んだ。

▲数々の有名他業種ブランドとコラボしてその存在感を示してきた「奈雪の茶」

商品の品質にこだわり、原料の選定から新商品の開発まで徹底した管理体制を追求する、全ての企業が具備すべき誠実さ。時代の波に乗ってPRや販路拡大に貪欲に取り組もうとするチャレンジ精神。「奈雪の茶」の快進撃には、それを支える確かな企業精神があったのだ。

文：李翌琳　翻訳/デザイン：新山順子