【ふりがな付き】日本、「注文を間違える料理店」が話題 客が怒らないワケは?
店員が料理の名前も覚えられず、なかなか料理を持ってこず、持ってきても注文とは違う料理が出てくると、普通の客なら怒ってしまうだろう。ところが、日本に最近、そのようなことが「普通に」起きてしまうレストランが登場し、話題になっている。
東京に登場した「注文をまちがえる料理店」は、名前を見ただけで、普通のレストランではないことが分かる。このレストランは、外観や厨房はごく普通であるものの、店員6人が全員高齢の女性である点だけは他のレストランと少し異なる。客が来店すると、この女性たちがやさしい笑顔で迎えてくれるものの、彼女たちは自分がここで何をしているのかさえ忘れてしまうことがあり、注文を何度も確認することも日常茶飯事という。
それでも、このレストランに来る客はみんな我慢強く、怒るどころか、やさしく対応し、自分で注文したい料理を紙に書いてあげることもあり、最終的に注文を間違えていても全く怒らない。
それはどうしてなのだろう?実はこの高齢の女性6人はみんな認知症を抱えている。認知症になると、記憶障害や思考力低下が起き、日常の生活にも影響が出る。
そういった事情を知ってやって来る客たちは、注文に時間がかかったり、店員が注文を間違えたりしても、決して気を悪くすることはない。なかには、「本当に注文したものが来るのかという点も含めてワクワクする」という客さえいるという。
実は、この料理店は、プレオープンイベントとして6月3日と4日だけ開催された「ポップアップレストラン」だ。
このイベントを企画したのは、テレビ局ディレクターの小国士朗さん。4年前、認知症介護のプロのドキュメンタリー番組を作っていたときに経験した、ある「間違え」がこのイベントのきっかけという。番組の舞台となったグループホームで生活する認知症の人たちは、買い物も料理も掃除も洗濯も、自分ができることはすべてやっていた。ある日、聞いていた献立はハンバーグだったのに、餃子が出てきたことがあり、「あれ?今日はたしかハンバーグでしたよね?」と言いたい気持ちがこみ上げてきたものの、認知症を抱えていることを考えて、怒るのではなく寛容さを示すことにしたという。
高齢化社会に突入している日本では、認知症患者が年々増加している。周りの人や自分が、認知症になる可能性も十分にある。「法律や制度を変えることももちろん大切だけど、私たちがほんのちょっと寛容であることで解決する問題もたくさんあると思う」と小国さん。
また、小国さんは、「間違えることを受け入れる、間違えることを一緒に楽しむという価値観をこのレストランから発信できれば」とした。実行委員会によると、資金の問題から、今回は2日のみの開催となったものの、今後クラウドファンディングなどで資金を集め、9月をめどに1週間程度の期間で本オープンしたいということだ。
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