美団が香港に初進出、新ブランド「KeeTa」で出前サービスを開始
生活プラットフォームの美団(メイトゥアン)がこのほど、香港エリアでフードデリバリーの新ブランド「KeeTa」をリリースした。まずは旺角(モンコック)と大角咀(タイコックツイ)でテスト運営し、年末までには全香港へと面を広げていく予定だ。
KeeTaでは、オーダーの最低金額を60香港ドル程度に設定し、競合のプラットフォームよりも低く抑えた。一連のプロモーションや「時間厳守保証」のポリシーを掲げ、ユーザーの囲い込みをねらう。
◆海外進出の機が熟した?
生活プラットフォームの美団(メイトゥアン)傘下の新プラットフォーム「KeeTa」が22日、香港エリアでフードデリバリー業務をスタートさせた。まずは人口密集地域である旺角(モンコック)と大角咀(タイコックツイ)でテスト運営が行われ、その後、年末までに香港全域がサービス対象エリアとなる予定だ。消費者が配達サービスのオーダーに使うKeeTaアプリは主要アプリストアで入手が可能になっている。
このプロジェクトにまつわる美団の動向については、7か月前から中国国内の報道でも取りざたされてきたが、じつはそれ以前にも2018年上半期の時点で美団には海外展開の構想が持ち上がっていたという。しかし、香港現地の法規上の制約や、電動バイクの使用ルール等がハードルとなり、進出計画はいったん棚上げにされたと見られる。
それでも2016年から同社が着手してきた旅行関連のサービスについては進展を見ており、美団のプラットフォームではすでに世界各国の主要都市のホテルがカバーされている。
美団のフードデリバリー事業は成長を続けており、2025年までに1日1億個の配達を行うというのが同社が掲げる目標だ。しかし、収益、取引件数ともに2021年から2022年第1四半期にかけて前年同期比で成長の減速が明らかになってきた。そのため、海外市場の開拓を含めた新たな成長エンジンの確保が喫緊の課題となってきたと見なせるだろう。
とはいえ、中国本土以外でフードデリバリー市場を開拓していくのは大きな苦難が伴うのは目に見えている。前例には「滴滴外売」がある。滴滴は約100人のチームを結成して、半年もの間、ブラジルの中小都市でシェア獲得に尽力したが、5%がやっとだったといわれる。同地で圧倒的なシェアを誇るiFoodの牙城をついに崩すことができなかった。
また、メキシコ市場では、市場シェアが約3分の1までに至ったものの、獲得オーダー数から見れば1日平均で20万件に満たない程度だ。成長のポテンシャルが限定的であるのは明白だった。現金取引が多く、中国本土とは異なる商習慣や文化、法環境の違いも事業展開のうえでネックになっていたことが想像される。
◆飲食文化やコストがハードルに
ラテンアメリカの国・地域と比べると、美団が市場開拓に挑む香港エリアは中国本土の間の文化や生活慣習の差異は小さく、一見、ハードルが低いように思える。しかし、事はそう単純ではない。香港のフードデリバリー市場は、フードパンダ(Foodpanda)、デリバロー(Deliveroo)、ウーバーイーツ(Uber Eats)の3者が主要プレイヤーとなっており、うちフードパンダが半分のシェアを占めている。
香港ではフードデリバリーがそれほど浸透していないことも美団にとっては大きなチャレンジとなる。人件費や手数料が高く、法定最低賃金が時給37.5香港ドルにものぼるからだ。さらに同地の「道路交通条例」にしたがうと、電動式バイクが「自動車」に分類されており、ナンバープレートの登録が必要になる。また、インドやネパール、パキスタンなど他国や地域からの移民も多く、コミュニケーション面でも中国本土内のようにはスムーズに行かないことがリスクになる。
◆いつまで“紙幣燃やす”?
しかし、香港市場を試金石として国際市場に挑戦していこうという美団の野心は猛々しい。KeeTaは新規登録ユーザーにキャッシュ特典を提供する等のキャンペーンを実施しており、ユーザーの取り込みに攻勢をかけている。ユーザーに対して配達時間の厳守を保証するなどの政策を導入したかと思えば、配達員に魅力的な報奨金制度を提示するなどしてインフラ整備に余念がない。
ちなみに、配達員の勤務形態には、即時オンラインモードと予約モードが用意されており、報奨金や配達にかかわる回数が増えれば配達員はより多くの収入が獲得できる。Keetaの求人広告では、月に500件の注文をこなし、全ての報奨金を受け取ることができれば、“徒歩配達員”なら2万香港ドル、“バイク配達員”なら最大3万5000香港ドルの収入になると見積もっている。
市場参入段階で行う利益を顧みない多大な投資のことを中国語では「紙幣を燃やす(烧钱)」と言うことがある。美団はまさに紙幣に火を灯すがごとくビジネス戦争を香港でも仕掛けようとしている。同社にとっては忍耐が求められる挑戦となった。(編集:耕雲)
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