一線都市の沽券に関わる?広州も「ダブル空港」に名乗り
1都市で2つの空港を有する「双机场(ダブル空港)」という言葉がネット報道の見出しに踊ることが増えてきた。都市のステータスを示す重要なファクターにもなっており、中国本土では北京、上海、成都に続き、広州や重慶、南京、昆明、鄭州、西安等が「ダブル空港都市」を目指している。
◆“ダブル空港”に名乗り
珠江デルタ地域グレーターベイエリアにおいて広州白雲空港、深セン宝安空港に次ぐ新空港の建設プロジェクトがいよいよ動き出そうとしている。今年年末にも着工が予定されている「広州第2空港」の建設予定地は佛山市高明区で、2021年3月に中国民用航空局から批准を受けた。将来的には最大6000万人の旅客受け入れが可能な国際ハブ空港として役割を果たしていくことになる。投資額は500億元。
広州には現在、利用旅客数が年間約7000万人にのぼる広州白雲国際空港がある。珠江デルタでは高速鉄道やフェリー、さまざまな交通手段によって連携が取りやすく、広州第2空港の建設を渇望する声はそれほど強いものではなかったといわれる。それでも激しくなる都市間競争のなかで、ダブル空港の実現が一線都市としての面目に関わるものとして受け取られてきた向きもありそうだ。
◆ 空港建設のハードル
中国の空港は、ハブ空港、幹線空港、支線空港に分類され、さらに旅客の年間利用数に基づいて複数のクラスに分けられている。飛行等級としても4Fから2Bまでの格付けがある。「ダブル空港」都市を名乗るには、少なくとも1000万人以上の年間旅客利用数を擁することや、飛行等級が4Eまたは4Fで、ハブ空港または幹線空港であることが要件になる。
ダブル空港の実現は、新たな航路開設のうえで有利になる一方、災害や天候を事由とした運休といった事態を減らせるメリットがある。その一方、2つの空港間のアクセスや交通渋滞への対処等、都市計画の面で対処しなければならないハードルも増えることになる。広州新空港建設に伴うさまざまな周辺プロジェクトの動向についても要注目だ。
◆ダブル空港はステータス
もちろん空港の数を競うというだけなら、2025年までに35もの空港の所有を見込む新疆ウイグル自治区に広州市は遠く及ばない。中国の31の省のうち7つの省には空港が10以上あり、2つ以上の空港を持つ都市は24都市を数えるといわれる。ただし、最高レベルの等級の空港を備えた厳密な意味での中国の「ダブル空港」都市は、いまのところ北京、上海、成都のみだ。
世界に目を向ければ、ニューヨーク(ジョン・エフ・ケネディー空港(JFK)、ニューアーク空港(EWR)、ガーディア空港(LGA))やパリ(シャルル・ド・ゴール空港(CDG)、オルリー空港(ORY))、ロンドン(ヒースロー空港発着(LHR)、ガトウィック空港(LGW)、スタンステッド空港(STN)・ルートン空港(LTN)・ロンドンシティ空港(LCY))のように国際的に名高い都市が複数の空港を擁している。世界レベルでも都市間競争が激化するなか、高グレードな空港を複数持つことは都市のステータスを表す重要なファクターだと言えそうだ。
◆空港を持たない新一線都市
現在、中国では広州のほか、重慶、南京、昆明、鄭州、西安等、主に新一線都市でダブル空港都市の座を得ようと計画が立ち上がっている。また、上海は第3空港の建設に向けてプロジェクトが動き出しており、中国初の「トリプル空港都市」として存在感を示すことになる。
ただ、ネットでは、都市別GRPランキングで中国第6位の蘇州市がいまだ空港を持たない都市であることを訝る声もある。そもそも上海第3空港の立地は江蘇省南通市だ。蘇州市から同市へのアクセスは若干だが上海からよりも近いというのが実状であり(上海ー南通間が約127キロに対して蘇州ー南通間は108キロ)、千葉県にありながら「東京成田」を名乗るのに似ている。蘇州をはじめ江蘇省の人は果たして「上海第3空港」という名称にどのような思いを寄せているのだろうか。