茶系飲料市場、健康志向と革新で主役交代、新興ブランド台頭で競争激化
中国の茶系飲料市場が激しい競争にさらされている。業界の草分けと称されたブランドに勢いはもはやなく、有名人をイメージキャラクターに起用して一時期話題をさらいながら突然の失速に見舞われているブランドもある。一方で健康志向を打ち出し、急成長を遂げている新興ブランドの興隆が目覚ましい。今後の市場地図の行方に注目が集まる。
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有名人効果の限界
中国の茶系飲料市場は戦国時代を迎えている。「喜茶」は市場探索のために高級店舗と低価格ブランド「喜小茶」を開設し、全面的に加盟システムを開放している。一方、最古参と称してよい「快楽レモン」や「CoCo都可」は急速に存在感を薄めている。革新的なマーケティング手法や市場ニーズに合致した価格戦略で版図を広げる新興ブランドの攻勢に押されているのが実状だ。
一方、台湾資本のティースタンド「麦吉(machimachi)」が中国本土の市場で経営困難に直面し、2020年に40店近くあった店舗数が5店舗まで減少したことが注目されている。イメージキャラクターとして周傑倫(ジェイ・チョウ)が起用され話題になったものの、有名人効果は長続きしなかった。一方、人気女優の関晓彤(クアン・シャオトン)を広告塔として起用した「天然呆」の店舗数は昨年、2021年の181店舗から2023年の47店舗と激減した。ブランドの信頼性が問われる事態にも直面し苦戦を強いられている。
一世風靡した「奈雪」は失速
「奈雪之茶」も上場後の展開が芳しくなく、新たな成長戦略が求められている。茶飲料価格の引下げにもかかわらず販売数は増えていないのが現状で、広告費用の削済と運営コストの管理に成功しているものの市場での競争力は低下している。“日本色”を払拭するためのロゴ変更も行われたが、これが業績の向上にはつながることはなかったようだ。
こうした中で同ブランドが突破口を見出そうとしているのが健康イメージの確立だ。中国全国で初めて「健康飲料ラベル」を導入し、健康意識が高まった消費者のニーズに対応している。カロリー表示は店舗内のメニューやアプリ(ミニプログラム)で確認でき、糖分の量も注文時にカスタマイズできる。
農村から都市への戦略シフト
茶系飲料市場で低価格路線を進め、既存ブランドにプレッシャーを与え続けているのが蜜雪冰城(ミ-シュエ)だ。ただし、上海の一部店舗では最近商品価格を引き上げ、話題となった。運営コストの変動と市場環境への適応が理由とされ、とくに運営コストが高い上海では加盟店を支援するための措置と目されている。
「農村から都市を包囲する(農村包囲都市)」戦略からの脱皮も見られる。主要ビジネスエリアでの出店で露出度を上げる戦略へのシフトも】見られ、年初(2024年1月2日)には香港証券取引所に上場申請を行ったことでも話題になった。価格だけでなく、製品の品質や健康面を重視する市場ニーズに適応する必要にも面しており、今後の展開が注目される。
次に“万店”を達成するブランドは?
3万6000店舗(2023年)という圧倒的な店舗数で存在感を高める蜜雪冰城の他にも「滬上阿姨(アンティ・ジェニー)」、「古茗(グッドミー)」、そして「茶百道(チャパンダ)」の3ブランドが上場を予定している。「滬上阿姨」は2023年9月までに全国に7,297店舗を展開し、健康志向の製品と高品質な原材料に定評があるとされる。「古茗」は蜜雪冰城と同じ今年1月2日に上場申請を行っている。9,000店舗以上を運営し、特に10元から20元の価格帯で市場シェアを拡大している。新規加盟店の負担軽減をかかげ、加盟初年度の「加盟料0元」を提示したことも話題になった。
四川百茶百道実業が運営する「茶百道(チャパンダ)が」は、香港証券取引所に上場を目指し、23日の新規株式公開(IPO)を通じて約24.56億香港ドル(約510億円)を調達する計画で、これを運営能力の向上、デジタル化推進、人材育成、自社ブランドの市場拡大などに充てる見通しだ。同ブランドは2008年に設立し、2023年のデータによると全国に8,016店舗を展開する。市場シェアは6.8%で業界第3位にある。1.03億人の会員数を擁し、顧客のロイヤリティも高いといわれる。(編集:耕雲)
参考
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