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渡邊信一郎《中國古代國家論》出版

中古史
2024-09-15

汲古叢書175 中國古代國家論

◎中國古代國家體制理論はどこまで總括されたのか!

著者 渡邊 信一郎 著
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 殷周秦漢
東洋史(アジア) > 魏晋隋唐
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2023/01/12
ISBN 9784762960741
判型・ページ数 A5・350ページ
定価 9,900円(本体9,000円+税)


目  次


まえがき
序  説 時代區分論の可能性――中國史の總體的認識をめざして
一 時代區分論の現狀

二 唐宋變革期を見る眼――變革の評價をめぐって
三 時代區分論の可能性――唐宋變革を中心に


第一部 古代帝國の成立と古典的國制


第一章 中國文明の起源問題をめぐって――侯外廬『中國古代社會史論』によせて
一 侯外廬『中國古代社會史論』をめぐって

二 中國文明の起源をめぐって


第二章 百姓の成立――中國における國家の形成によせて
一 秦漢時代以後の百姓――編戸・齊民

二 前四世紀の百姓
三 西周期の百生

四 百生から百姓へ――轉化の社會的根據


第三章 中國における第一次古代帝國の形成――龍山文化期から漢代にいたる聚落形態研究から
一 聚落形態から見た帝國の形成
(一)聚落形態から見た單位基層聚落群の變遷

(二)縣制の形成と單位基層聚落群の再編
二 廣領域交通圏の形成と第一次古代帝國の形成
(一)帝國を可能にする要因

(二)經濟的文化的統合の相互作用圏
(三)軍事的相互作用圏と帝國編成


第四章 後漢における古典的國制の成立――漢家故事と漢禮
一 中國古典國制の基盤――王莽の世紀と天下觀念
二 後漢初における古典的國制の定立
(一)後漢初の國制再定位と諸儒・官人

(二)張純と曹充――再定位の中核
三 漢家禮制の未完――「漢家故事」と「漢禮」
(一)「漢家故事」――尚書舊事・尚書故事・漢家制度

(二)曹褒の『漢禮』


第二部 專制國家と國家的土地所有


第五章 中國古代專制國家と官人階級
一 戰前期の官人階級論

二 中國古代專制國家における統治者集團と官人階級
三 統治者集團の形成と階級

四 イデオロギー的階級についてむすびにかえて――中國專制國家の時代區分


第六章 古代中國の身分制的土地所有――「均田制」の再檢討
一 唐代の身分制的土地所有
(一)唐開元二十五年田令の構造

(二)唐代給田制(均田制)の歷史的特質――身分制的土地所有
二 唐代身分制的土地所有の淵源
(一)身分制的土地所有と「均田之制」

(二)品制的土地所有と均田制の展開


第七章 傳統中國の均平秩序――經濟と禮樂
一 「均田之制」と兩税法

(一)「均田之制」

(二)「兩税法」
二 禮樂と均平秩序

三 均・均平秩序の生成


第八章 傳統中國の國家體制
一 天下型國家

二 天下型國家の構成

三 貢 獻 制

四 封 建 制
五 郡縣制(州縣制)


小  結


附  論 小經營生產樣式と國家的土地所有
一 小經營生產樣式槪念の系譜
(一)小經營生產樣式槪念の形成

(二)中國古代史研究と小經營生產樣式
二 中國前近代史研究の課題と小經營生產樣式
(一)中國前近代史研究と小經營生產樣式

(二)秦漢隋唐期の國家史研究
(三)國家・共同體・小經營生產樣式

(四)小  結
三 國家的土地所有と封建的土地所有――マルクスの前近代的土地所有槪念をてがかりに
(一)法制史家の中國史認識

(二)マルクスの前近代的土地所有槪念
(三)封建的土地所有と國家的土地所有

(1)封建的土地所有

(2)國家的土地所有


おわりに/參考文獻/あとがき/索  引


【まえがき より】


 本書は、先秦期から唐代までの中國の古代國家を對象とし、古代帝國とその形成過程、專制國家の國制的特質、國制の古典的形態の成立、その社會經濟的基盤としての國家的土地所有について、槪括的・理論的に論じた仕事である。中國の古代國家は、(1)膨大な官僚と軍隊を擁する制度國家であり、(2)皇帝=天子が廣領域にまたがって多種族を統治する複合的政治社會である。この膨大な制度國家・複合的政治社會をとらえる筆者の槪括的な枠組は、(1)專制國家論と(2)中華帝國論である。この枠組をめぐって、すでに樣ざまな觀點から追究し、これまでに『中國古代國家の思想構造―專制國家とイデオロギー』(一九九四年)、『天空の玉座―中國古代帝國の朝政と儀禮』(一九九六年)、『中國古代の王權と天下秩序』(二〇〇三年)、『中國古代の財政と國家』(二〇一〇年)、『中國古代の樂制と國家―日本雅樂の源流』(二〇一三年)を世に問うてきた。本書は、この枠組みのさらなる深化と展開を目的とし、中國古代の帝國論と專制國家論にかかわる五つの主題、すなわち①帝國論、②國家形成論、③古典的國制論、④專制國家論、⑤國家的土地所有をとりあげて論じ、これを時代順に二部八章と附論三篇にわけ、一書に編成したものである。先年公刊した『中國史①中華の成立 唐代まで』(岩波書店、二〇一九年)の基礎をなす理論的實證的研究である。
 本書の内容をあらかじめ槪括的に示せば、つぎのとおり。
 序説では、時代區分論を論評するかたちで中國史の全體的把握の可能性をめざして本書の立脚點を提示した。四半世紀まえに公刊した論考で、今日の中國、世界經濟の現状に照らすと未熟の議論も多い。ただ本論各章を執筆する際の基本的な觀點を記してあり、現在もこの觀點に大きな變更はない。本論への導入部としたい。
 第一部は、①帝國論を主題として四章にわけた。第一章・三章は、龍山文化期以來の三級制聚落群を基盤とする秦漢帝國の成立過程を論じ、第二章ではその社會的基礎をなす百姓=小經營生產樣式の成立をとりあげて、中國における②國家形成の特質を明らかにした。第四章では、王莽期を中核とする前後漢交替期の一世紀をかけ、儒家的思惟・經典による正當化=古典化過程をへて、中國における③古典的國制が構築される經緯を論じた。
 第二部は、④專制國家論を主題として四章にわけた。第五章では、國家成立の基盤である社會的共同業務と階級形成の問題をとりあげ、中國の專制國家が皇帝を頂點とする獨自のイデオロギー的階級(官僚制)を統治階級とする國家であると規定した。そのうえで、第六章では、從前の「均田制」を再檢討し、均田制は統治階級と庶民百姓とをふくめた身分制的土地所有を内實とする國家的土地所有であることを論じ、第七章ではその社會的基盤を問題にして、平均、均平秩序の存在することを指摘した。第八章では前記七章の論点をうけ、中國前近代國家の特質を天子=皇帝が生民=百姓を統治する天下型國家であると規定し、貢獻制・封建制・郡縣制の累積的な相互作用の分析をつうじて、あらためて帝國論・專制國家論を總括した。
 附論三篇は、本研究に通底する論點である小經營生產樣式と社會的共同業務、および國家的土地所有について、中國古代史の研究動向とかかわらせて理論的解明を試みたもので、本論八章の理解を理論面から補う仕事である。


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